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離婚した妻が包丁を手に「金貸せーっ!」。ホラーのような離婚劇の結末は… | ビューティ

時刻(time):2020-08-01 14:52源泉(Origin):δ֪ 著者(author):kangli
【 ぼくたちの離婚 Vol.16 因果応報なき世界 #2】 映像関係の会社に勤める筒本望さん(仮名/43歳)は、30歳の時に亜子さん(仮名/当時27歳)と出会う。パニック障害を患う亜子さんは結婚後に仕事を辞め、その後浮気に走るが、 「あなたに離婚されたら死ぬ」 と錯乱(詳しくは 前編「「妻が風呂に有毒ガスを…」殺しあう寸前までいった夫婦の悲劇」 を参照)。意を決し

ぼくたちの離婚 Vol.16 因果応報なき世界 #2】

 映像関係の会社に勤める筒本望さん(仮名/43歳)は、30歳の時に亜子さん(仮名/当時27歳)と出会う。パニック障害を患う亜子さんは結婚後に仕事を辞め、その後浮気に走るが、「あなたに離婚されたら死ぬ」と錯乱(詳しくは前編「「妻が風呂に有毒ガスを…」殺しあう寸前までいった夫婦の悲劇」を参照)。意を決した筒本さんは弁護士に相談した。

100万円払って離婚してもらう


「弁護士に、どうやったらこのヤバい奴と手が切れるのかを教えてくださいと、単刀直入に言いました。自分の保身が第一です。……卑怯とでもなんとでも、言ってください」

 筆者が「保身とは……」と質問しかけると、筒本さんは食い気味に答えた。

「もし配偶者に自死されたら超面倒でしょ? 自死しないにしても、病気に苦しむ人間を見放したら見放したで、世間から責められるのも、良心の呵責に苦しむのも、僕です。どっちにしろ僕が損する。“勝ち”はないんです。だったら、ダメージを最小にする権利くらい行使させてほしい」

 そうですね、としか言いようがなかった。

「すると、弁護士から『筒本さん、お金払っちゃいましょう』と言われました。浮気したのは向こうなのに、なんで僕が? と思ったんですが……」

写真はイメージです

写真はイメージです(以下同)

 要は、100%筒本さんに養われている亜子さんは、離婚すれば生活が立ち行かなくなる。だが再就職は病気のこともあって難しい。「離婚したら死ぬ」は「離婚したら(経済的に)死ぬ」の意味でもあるのだ。であれば、当座生活に困らない現金を渡せば離婚を承諾してくれるのではないか。弁護士はそう踏んだわけだ。とはいえ、筒本さんが亜子さんに100万円を譲渡する義理などない。

「最初に100万円払い、毎月2万円ずつ分割で返してもらうよう提案してみては、と言われました。公正証書にその旨を記し、ハンコさえもらってしまえばこっちのものだと。奥さんは冷静な判断ができなくなっているから、飛びつくんじゃないですか? と」

 筒元さんは「そんなにうまく行くだろうか?」と半信半疑で、おそるおそる亜子さんに提案してみた。

冗談みたいに簡単にハンコをついてくれましたよ。お金用意してくれるなら離婚してもいいよ、って。心底、呆れました」

 併せて離婚届も提出した。ところが、亜子さんは一向に家を出ていかない。公正証書に「退去期限」を明記していなかったのだ。




大晦日の胸騒ぎ


「亜子は『バイトを決めたら出て行く』と言っていましたが、何日経ってもなかなか出ていかない。また喧嘩の日々です。ただ、その時住んでいたマンションが僕の実家の近くだったので、亜子と顔を会わせて嫌な気持ちになるよりはと、僕は実家から会社に通勤するようにしました」

 そうして何週間かすぎ、ようやく亜子さんは筒本さんに鍵を返却して家を出た。

「亜子が家を出たのが年末だったので、僕はマンションに戻らず、そのまま実家に居続けて正月を迎えようとしました。別れられてよかったねと母親と話してたんですが、なんだか胸騒ぎがしたので、12月31日の夕方に、実家の犬を散歩がてらマンションに行ってみたんですよ」

 亜子さんが出て行ったドアの前に立った筒本さん。ドアに手をかけると、なんと鍵がかかっていない。意を決してドアを開けた。








「あなたを待ってた」


真っ暗な部屋に、亜子が幽霊みたいにぼーっと立っていました。びっくりして、『え? 何してんの?』って言ったら、ゴニョゴニョと聞き取りづらい声で『あなたを待ってた』って。……ぞっとしました」

ぼくたちの離婚 Vol.16 #2
 おそらくスペアキーを作っていたのだろう。とはいえ、今日この時間に筒本さんがマンションに立ち寄ることを、亜子さんが知るはずはない。何日間もずっと待っていたのか。それも定かではない。

「亜子は『お金貸してほしい』と僕に言いました。渡した100万円はどうしたのかと聞いたら『歌舞伎町で使ったら、すぐなくなっちゃった』と。ホストクラブで豪遊したようでした」

 あまりのことに呆然として立ち尽くす筒本さん。暗がりに慣れてきた目で亜子さんの顔をよく見ると、視線が虚ろ。ろれつも回っておらず、まともな会話ができない。




包丁が鼻先まで迫ってきて…


 すると亜子さんは「お金欲しいなー」と言いながら、キッチンに向かってゆらりと歩き出した。

「予想通り、包丁を手に取りました。こっちにつかつか歩いてきて、突然激昂して『金貸せって言ってんだろぉおおーーーーー』。鼻先くらいの距離まで刃物が迫ってきて……。亜子は明らかに意識が朦朧(もうろう)としていました」

 ここで騒いだり押さえつけたりすれば、逆上されかねない。筒本さんは「今お金持ってないから、コンビニで下ろせるだけ下ろしてくる。だから包丁だけ下げてくれないか」と言って亜子さん落ち着かせ、彼女を部屋に残してマンションの外に出た。

「実は、離婚前に亜子が『死ぬ死ぬ騒ぎ』を起こして僕が身の危険を感じていた時、所轄の警察署に相談してたんです。その時相談に乗ってもらった警察官に携帯から連絡しました。今、元妻が包丁出してます、と」

 するとパトカーが3台到着し、中から出てきた警官が部屋にいた亜子さんを取り押さえた。亜子さんは抵抗し、大声で叫ぶ。「離せっつってんだろぉぉぉ! 離せバカヤロー!」。筒本さんは「まるで『警察24時』のようでした」とため息まじりに振り返る。








「厄介な娘」を見放した父親


 警察署に連行される亜子さん。同行し、隣の部屋で待機する筒本さん。すると亜子さんの怒号が壁の向こうから聞こえてきた。「お前なに警察呼んでんだよぉ! ぶっ殺してやるからな!」。筒本さんに向けた言葉だった。

 無論、筒本さんが亜子さんを引き取るわけにはいかない。警察は隣県に住んでいる亜子さんの父親に連絡を取ったが、警察に迎えに行くのを拒否されたという。その父親については結婚前から違和感があったと、筒本さんは振り返る。

写真はイメージです
「亜子が父親と仲が悪い、話が合わないというのは結婚前から聞いていました。その父親もかなりの変人です。結婚の挨拶に行った時、耳が悪いのかそういう性格なのかわかりませんが、自分の都合だけをバーっと話して、人の話をあまり聞いてない。しかも『娘を厄介払いできてホッとした』と顔に書いてありましたよ。嫌というほど知ってたんでしょうね、亜子が厄介な娘だということは。

亜子も亜子で、それまで聞いたことのない汚い言葉で『このじじい』とか『母はこいつのせいで亡くなったようなもの』と実の父親のことを罵っていました。なぜ彼のせいで亡くなったのかは、結局聞けずじまいでしたが……」




「お前のババアもぶっ殺す」


 結婚に際し、筒本さんは不安にならなかったのだろうか。

「当時は特になんとも思いませんでしたが、今から考えれば浅はかでした。その父親とも親類縁者になるんだから、もっと考えてもよかったですね……」

 結局、亜子さんはパトカーに乗せられ、父親の住む実家まで送り届けられることになった。筒本さんの携帯には、移送中も亜子さんからのLINEが届き続けたという。「ぶっ殺す」「お前のババアもぶっ殺す」。ババアとは筒本さんの母親のことだ。筒本さんはこれを警官に見せ、警官の巡回ルートに実家も入れてもらうことにした。

 しかし、話はまだ終わらない。








家財道具一式を奪おうとした元妻


「年が明けて1月の4日だったか5日だったか。また虫の知らせがして、マンションに行ってみたんです。すると、またもドアが開いていて……中を見ると、赤帽の人が荷物を運び出そうとしているところでした」

写真はイメージです
 亜子さんの仕業だった。大家に「妻ですが、鍵をなくしてしまった」言って鍵を借り、筒本さんに黙って大型テレビやパソコンなど、家財道具一式を運び出そうとしていたのだ。無論、その家財道具はすべて筒本さんの所有物。しかしタイミング良く、亜子さんは部屋にいなかった。

「とりあえず赤帽を帰してマンションの外に出ると、ちょうど亜子が道の向こうからこちらに戻ってくるところでした。それでまた警察に電話して来てもらいました」

 亜子さんは警察に“連行”され、以降、2度と筒本さんの前に現れなかった。あっけない幕切れである。

「その後、亜子の父親から相談の電話が来ました。亜子をどうすべきかと。僕は、『今は正気じゃないので、身の危険を感じたら入院させた方がいい』と伝えました。その後しばらく経ってから、措置入院したという連絡が彼から入ったのですが、呆れたことに『とにかく早く迎えに来てほしい』と言われたんです
 既に僕は離婚していましたし、復縁どころか二度と関わりたくない。この人は何を言ってるんだろうと。それほどまでに娘を誰かに押し付けたい、厄介払いしたくて必死だったんですよ。最後まで」




後悔はあるが、反省はない


 筒本さんは「交際中からメンタルが不安定だとは承知していたが、ここまでのモンスターになるとは思ってもみなかった」と、地獄の3年間を総括した。

「亜子と仲がよくなりかけた頃、パニック障害を患う男の友人に相談したことがあるんです。彼は『付き合うなら大変だと思うよ』と。あの言葉をもっと重大に考えていれば……。亜子が併発していた精神疾患について、当時の僕はあまりにも無知でした。上辺だけわかったつもりになっていてもダメ。病気の人と深い仲になるには、相当な覚悟が必要です」

「亜子さんの病気についてもっと知っていれば、結婚しなかったですか?」と聞くと、筒本さんは「そうですね」と即答し、つぶやいた。

「“違う世界”というのがあるんです。“関わっちゃいけない世界”というのが……」

 では、「関わっちゃいけない世界の住人たち」は、一体どうすればいいのだろうか。我ながら卑怯な問いだが、筒本さんは少しの沈黙を置いて、こう答えた。

「どうすればいいんですかねえ……。いずれにしろ、病床の父親と同じセリフを昔の僕に言ってやりたいですよ。『お前、あの女はやめとけ』って」

 別の話題を探そうとした矢先、筒本さんが先に口を開いた。

「……あのね、正直“学び”にはなってないんですよ、亜子との結婚生活は。よく『失敗から学ぶ』とか言うけど、そういうふうに考えたことは一度もありません」

 やや開き直ったような言い方だ。「つまり……?」と言葉を促してみた。

「僕は反省してないってことですよ。自分に悪い点があったから良くない結婚をしてしまったのかと聞かれれば、そうではないということです。浮気したわけでも、亜子に不義理を働いたわけでもない。亜子が毎日のように死ぬ死ぬと言っていた時に僕が思っていたのは、人間、不幸というのはなんの脈絡もなく訪れるんだってことです。因果応報じゃないってこと








「震災やコロナと同じ」


 よどみない口調で、筒本さんは続けた。

天災みたいなものです。東日本大震災や新型コロナと同じ。前触れもなくいきなりやってきて、日常を根こそぎ全部変えてしまう。真面目に生きてさえいれば災厄を逃れられるわけじゃないでしょう? 平穏な日常が、ある日突然、『私、死ぬから』と口走って家を飛び出すメンヘラ妻を探しに行く日々に変わる。それが、いつ終わるとも知れず続く。想像できます?」

写真はイメージです
 いやあ……と曖昧な返事をすると、すかさず言われた。

「自己責任論とか言うの、なしですよ(笑)」

 日頃から防災の備えがあれば、あるいは適切な行動を取っていれば、震災で命を落とすことはなかったのか。新型コロナに罹患したのは外出自粛を怠ったからなのか。結婚に失敗したのは、「そういう妻」を選んだ男の責任なのか――筒本さんが言っているのは、そういった類いの自己責任論だ。

 筒本さんはこれまで嫌というほど、「失敗した結婚」についての自己責任を周囲から問われ続けたのだろう。




数年後知った事実。元妻はちゃんと働けていた


 筒本さんは離婚の数年後、同業者を通じた風の噂で、亜子さんが映像関係の会社に就職したことを知る。しかも、現在に至るまで会社勤めはかなり長続きしているという。

「驚くことに、2、3年に1回、思い出したように亜子から電話がかかってくるんです。で、うっかり取っちゃうんですよ。用件ですか? しれっと映像関係の仕事の相談とか、業者の紹介依頼とかです。彼女、ごく普通に仕事してるんですよ。同業者で亜子と仕事したことあるやつに聞いたら、まあまあちゃんとしてるそうなんですよ。なんなんですかね、一体……」

 筒本さんは心底呆れたという顔をして、言った。

「結局、亜子は僕と結婚して仕事をする必要がなくなったから、余計なこと考えちゃって、おかしくなっていったと思うんです。その証拠に、離婚して働かなきゃいけなくなった今は、ちゃんと普通に仕事ができてる」

「つまりですよ」と筒本さんは畳みかける。

「亜子は僕と結婚しなければ病気も悪化しなかったし、仕事も辞めずに続けられた。僕と結婚したから不幸になったんです。あらゆる意味で、しなくて良かった結婚でした。誰も、何も、得してない

 あまりに救いがない。身も蓋もない結論だ。

「ほらね、学びなんかないでしょ(笑)。反省したってしょうがないんです」

<文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。「SPA!」「サイゾー」などで執筆。
【WEB】inadatoyoshi.com




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