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流産を経験した女性が語る「“自分の体内で命が消える”ことへの向き合い方」 « ビューテ

時刻(time):2022-11-24 08:33源泉(Origin):δ֪ 著者(author):kangli
みなさんは「流産」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?出産願望が(まだ)ない人には無縁かもしれません。実は流産(=妊娠22週より前に妊娠が終わること)に至る確率は妊娠全体で15パーセント程度と言われています。その危険性は年齢があがるごとに顕著に増加することが知られています。中には流産を2、3度繰り返す女性もいます。 ドイツ在住の私も2022年2月、
 みなさんは「流産」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?出産願望が(まだ)ない人には無縁かもしれません。実は流産(=妊娠22週より前に妊娠が終わること)に至る確率は妊娠全体で15パーセント程度と言われています。その危険性は年齢があがるごとに顕著に増加することが知られています。中には流産を2、3度繰り返す女性もいます。

 ドイツ在住の私も2022年2月、35歳のときに妊娠して、8週目で流産を経験しました。早期流産のほとんどは原因を探ることができません。ただ自分の体内で命が消えるという事実は、たとえ極小の胎児でも辛い喪失感を与えます。ここでは約半年間の私の心境の変化と家族(ドイツ人の夫と4歳の長女)との立ち直り方を綴ります。








軽い出血で受診し、流産が発覚


流産

※写真はイメージです

 第二子を妊娠したのは2022年2月。私も夫も待ち望んだ妊娠でした。しばらくは順調だったのですが、4月半ばにイースター休暇(金~月までの4連休)があり、その初日から軽い出血が始まりました。月経に比べると微量で、痛みはなし。

 妊娠初期に出血した友人がいるから、インターネットにもそれはあり得ると書いてあるから、と前向きに考えながら過ごしていました。それでも<念のため>連休明けにお世話になっている産婦人科に電話すると「今日来られますか」と。夫も気になっていたので二人で向かいました。

 この産婦人科医は娘の出産にも立ち会った人で、ドイツ人ですが例えると中谷美紀風の容姿と落ち着きがあります。「心拍を確認できません」、「体長を見るかぎり、8週目から成長していません」(当時は10週目)と言われると<流産>という言葉が出なくても、何が起こったのかすぐに理解できました。夫は窓の方を向き、涙目でした。

 私達は「はい」、「はい」と静かな声で医師の話の流れに沿うだけでした。感情的にならなかったのは最悪の事態もあり得ると予想していたからかもしれません。欠勤届(※1)と流産手術を行う病院の紹介状をもらい、10分後には診療所を出ました。

「あなたは何も悪くないですからね」と別れ際に言われました。私達は元々する予定だった買い物を済ませて帰宅しました。「よくあることだよね」などと少し会話を挟みながら。二人ともしばらく心が空っぽでした。

(※1 ドイツでは医者が欠勤届を発行し、病人が勤務先に提出します。)





1週間後に流産手術を受ける


 私が経験した自然流産は稽留流産(けいりゅうりゅうざん)と呼ばれます。体内で胎児の発育が止まり、子宮内にとどまっている状態のことを指します。胎児を出す方法は三つ。一つ目は静脈麻酔を使って子宮内容除去術を受けること。私はそのために手術ができる大きな病院の紹介状をもらいました。二つ目は日本国内では承認されていませんが、内服薬による子宮収縮による流産の促進です。そして、三つ目は自然排出が起こるまで待つ、完全流産すること。

 たとえ心拍がなくなっても、胎児自体はまだ存在し、妊婦の体は妊娠状態にあります。自然と腹痛(生理痛のような痛み)が起きるのを待ち、胎児と子宮内容を排出させる方法があります。ドイツ語ではこれを赤ちゃんが産声をあげないからでしょう、<静かな出産>(stille Geburt)と言います。不思議なことに私は産婦人科医でこのような選択肢について教わりませんでした。

 後に自然排出体験者から聞いたのですが、<静かな出産>はまだ妊娠に気づいていない人に腹痛と出血により偶発的に起きる場合があれば、妊婦自身が亡くなった胎児と手術というあっさりな別れ方をしたくない場合に選ぶことがあります。

 子宮内容除去術の話に戻ると、私はすぐに病院に電話し、予約を取り、手術が行われたのは1週間後のことでした。患者衣に着替え、廊下で待っている際、同じ階にある産科の方から赤ちゃんの元気な泣き声が聞こえました。タイミングの悪さに心が揺さぶられたことを今でも覚えています。

 その時は世界で最も聞きたくない音声であり、その子の母親を心底羨ましいと思いました。手術自体は20分程度で終わり、半日入院しただけでした。術後の痛みはなし。2~3日会社を休み、私はいつもの日常に戻りました。













流産の告知と手術のあとも冷静だった私


 ここまでの出来事を淡々と描いていると読者のみなさんは私の冷静さに驚くかもしれません。

 実際、流産告知後の1か月間は本当に淡々としていました。最初の3日間は涙さえ出ませんでした。妊婦の15パーセントは経験すると言われている負の統計に私が当てはまってもおかしくない、とか、今までの人生で大した災難にあっていないのだから、今回は私に舞い降りても仕方がないだろう、とかこの因果はしょうがないんだと考える傾向がありました。

「自分はこんなにドライでどうなんだろう。流産が判明してから赤ちゃんのことを<胚>と呼んでいるのはおかしいのか」(※2)。当時、私がフェイスブックに投稿した一言です。今思えばこれはおそらく子供と精神的な繋がりを持たないために無意識に引いた境界線。<胎児>と呼ぶことに急に抵抗を覚えました。

 同時に私はもやもやし始めました。早めに仕事復帰し、家には何も知らない娘がいて、自分の感情を露にする場所が自宅にも外にもないことにストレスを感じたのです。

 私達夫婦は幼い子に流産、つまり死について話すのは酷すぎる、という考えからこの話題を娘の前では避けました。友達にはオープンに打ち明けていましたが、じっくり語り合う機会はあまりありませんでした。

(※2 通常は不妊治療で受精された受精卵のことを「胚」といい、子宮内の胎児のことはそう呼びません)





同じ経験をしたカウンセラー


カウンセラー
「流産は悼(いた)んでよいことなのです」と言われたことがあります。近所の助産師の言葉で、今でも心の支えになっています。ドイツでは助産師が妊婦の流産・死産の心のケアをできます。健康保険対象のサービスなので、私はまだ<冷静なふり>をしていた時期に二回カウンセリングを受けに行きました。(※3)

 上記のような心境について話したり、病院での体験を述べたり、話せば自然と涙がこぼれて会話を中断しました。ママ友数人の食事会で、妊娠後期の人がいたため赤ちゃんの話題が多く辛かったことなども話しました。

 カウンセリングは1回約1時間。目の前の助産師は私の話をただそのまま受け止めてくれました。

 そしてその人自身も3度目の妊娠が流産だったこと、既にいた子供2人に隠さず話したこと、しばらくは夫と思い出の場所に散歩することを追悼の日課にしたこと、など彼女流の立ち直り方法を教えてくれました。あくまで参考のために私に強要することなく、優しい言葉で話してくれました。

(※3 本記事の医療監修・水谷医師のコメント「日本にはこのような制度・習慣がありません。流産後の胎児組織は検査に提出されたまま「保管」され続けるか、医療廃棄物として「破棄」されています。流産後の心理的なケアの重要性は一部叫ばれてはいますが、制度化されておらず保険診療の適応もありません。少子化対策の一環として、流産経験者もまた前向きになれるよう支援する政策が必要だと常々感じています。」)











亡くした赤ちゃんと本音で<向き合う>


泣く
 カウンセリングで聞いた追悼方法のアイディアをどう利用しようか考えていると、あることを思いつきました。娘も夫も寝た後に、子供部屋に行って亡くした赤ちゃんに話しかけよう。亡くした子の魂を感じたいから、などの幽霊現象を期待していたからではありません。ただ、頭の中で回る思いを声に出して、言葉にしたかったからです。

 私は子供部屋に行き、椅子に腰かけ、「あのね」と子供に話しかける口調で産めなくて悪かったこと、生まれていたら素敵なお姉ちゃんがいたこと、そのお姉ちゃんは兄弟がほしくて小さい子の面倒見が良いこと、候補にあった名前、などいろいろさらけ出しました。このような10分ほどのモノローグを日を空けて3回行いました。

 その後はもう全て吐き出したような感覚を覚え、繰り返すことはありませんでした。この行為で助産師にも言われた死を悲しむ重要性を具現化したのだと思っています。やっと自宅でも大量の涙を流すことができました。






夫と泣いて、夫と考えるこれからの家族計画


 亡くした子を悼むのは私だけでなく、夫も同じでした。彼は、私同様、仲の良い友人・知人にオープンに話し、元気でない様子を隠さず表に出しました。ドイツでは胎児の遺体は合葬されることが多いのですが、私達は病院で知らされた墓地に連絡を取り、墓石の位置を教わり、お墓参りに出かけました。

 これも手術の約1か月後のことです。到着後、二人とも泣きました。夫はサングラスをかけたまま、しくしくと。私は墓石の近くにあった大きな木にしがみつきながら。最後は抱き合いながら泣きました。一人だけでなく、夫婦で哀惜(あいせき)することも娘のいる日常では難しかったので、貴重な体験でした。

 お墓参り以外の時も私達は「最近、どんな気分?」としばらくはお互いの心境を聞き合っていました。これからの家族計画についても探り合いました。二人とも再挑戦を希望していたのですが、私の方がなるべく早く三度目の妊娠を望んでいました。夫は時に囚われることなくストレスフリーに。後者の考えの方が焦りもなく、心身にとっては楽です。

 私は半年経った最近、このような落ち着きをやっと持てるようになりました。特別なきっかけがあったわけではありません。一つ、役に立った情報といえば同じ経験者の話を読んだり聞いたりしている内に、健康面では次の妊娠は可能でも、みんな時間がかかるのだと悟ったからです。












4歳の長女に告白 未知の兄弟に関心を持つ


母と娘
 ある日、娘が幼稚園で同じ組の男子の話をしました。弟が生まれたのだと。でもママのお腹には死んだ赤ちゃんがいたこともあるのだと。とてもドライな口調で娘は話し、私達はただぽかんとしていました。もちろん私達の身に起こったことは秘密にして・・・。

 そして先月、娘に私の流産について告白しました。きっかけは一緒に遊びたがる娘に「今、お皿を洗ってるから」と断ると「赤ちゃんがいたら、その子と遊べるのに」と言われたこと。娘が兄弟を望んでいることは知っていました。最近の私の心は平穏だったので、私はその場で告白を決意しました。蛇口の水を止め、娘の目線の高さまでしゃがみ、こう言いました。

「あのね、本当はここ(お腹を撫でながら)に赤ちゃんがいたんだけど、死んじゃったの」「そうなんだね。幼稚園の○○のママもね……」と娘は前にもした話を繰り返しました。子供の理解とはすんなり入るもので、自然現象に対して無感情な反応があるので興味深いです。

 娘は顔を曇らすことなく私の話を聞いていました。別の日には突然「死んだ赤ちゃんの名前は何?」と言ってきたこともあります。娘が見たこともない兄弟に関心を抱くと、私は少し嬉しくなります。これもまた助産師のカウンセリングで感じたような優しい慰めになるのです。






流産と共に生きる


 もうすぐ、第二子の出産予定日です。私の心は落ち着いている時もあれば、ふとした瞬間ざわつきます。この記事を書いている最中も、平常心を保っている時と涙目になる時があります。幸い悲しみは長く続きません。

 周囲の人から「2人目はほしい?」と聞かれることがあります。その時は「ほしいけど、流産したの」と言うようにしています。反応は人それぞれです。「失礼な質問をしてごめん」と謝る人もいれば、「よくあることだよね。辛かったね」と真剣な眼差しを返す人も。事実を告げる時はいつもドキドキしますが、話して嫌な思いをしたことはありません。

 今後、私は子供を産めるのか分かりません。将来に期待もあれば、2度目の流産もあり得るので大きな不安もあります。流産経験者にとって次の妊娠は悲喜こもごもなのです。

 出産予定日には夫と久しぶりにお墓参りに行きます。この特別な追悼に娘を巻き込むべきなのか否か、今はまだ自分の中で判断を下せていません。私はきっとまた墓石の前で号泣して、泣き止んで、前を向いて。毎年同じことを繰り返すかもしれません。流産は閉じられる人生の一幕ではなく、忘れることのない人生の一部だから。

<文/町田文 医療監修/水谷佳敬>

【水谷佳敬】
2006年東邦大学医学部卒。
亀田総合病院にて家庭医療研修修了、長崎医療センターで産婦人科研修。さんむ医療センターで総合診療科・産婦人科を兼務。2022年6月よりファミール産院いちかわ勤務。無痛分娩などに従事。医療従事者者向けの講演・執筆など多数。産婦人科専門医・母体保護法指定医、家庭医療専門医・指導医。
町田文
東京都出身。2005年からドイツ在住。ミュンヘンでドイツ人の夫と娘と暮らす。アウグスブルグ大学社会学科修士課程修了。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。「時事ドットコム」(時事通信)、「ジュニアエラ」(朝日新聞出版)、「Vesta」(味の素食の文化センター)などに寄稿。




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