約3年間にわたった感染症対策の行動制限が段階的に解かれ、今年の3月13日からマスク着用も任意に。5月8日には感染症法の位置づけが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行して、人々の交流もコロナ禍前のような活気を取り戻してきました。
それはプライベートだけではなく、職場の人間関係でも同じこと。歓送迎会などの飲み会やイベントごとも、徐々に復活しつつありますね。
しかし中には、自宅待機やリモート作業など、これまで制限されてきたストレスの反動で、“とにかく大騒ぎをしたがる面倒くさい人たち”が一定数存在するとか……。
マスクの着用が自由化される直前の2月に「もうすぐ日本はノーマスクになるし!」という理由で、「上司の命令のもと、マスクなしでBBQをさせられました。マスク自由化って、マスクをしない自由だけでなく、する自由もあるはずでは?」という田代美菜さん(仮名・30歳)に話を聞きました。
イベント大好きな昭和おじさんたちに振り回される
「うちの会社は小規模なんですが、とにかく社長や年配の上司がイベントごとが大好き。コロナ禍前はお花見や花火、流しそうめんなどとにかく何かにつけて“ほぼ強制参加”の行事があったんです。
50代以上の上司たちは、『社員は全員家族! 行事で親睦を深めればそれが仕事にいい影響をもたらす』っていう昭和な考え方。30代後半から40代の上司も、『自分たちも(これまで上司に付き合って)大変な思いをしてきたんだから、後輩も同じように辛い思いをしろ』という、とにかく古い考え方なんです」

社員同士の交流は大切かもしれませんが、休日なのに有無を言わさず強制参加とは辛いものがありますね。
コロナ禍に入社した後輩たちが気の毒でならない
「私はもう慣れているんですが、かわいそうなのはもっと若い子たちや、コロナ禍に入ってきた後輩たちです。感染が拡大しているときは世間的に『行事やイベントごとは禁止』という絶対的なルールがあったので、上司たちも静かにせざるを得なかった。でも今いろいろ制限が解かれ始めて、その反動のように年明けからイベント事をどんどん企画するようになって……。春前の時点ですでに“飲みニケーション”と称された飲み会企画は4回、上司の家のホームパーティーにも2度参加させられています」
まさに昭和というかなんというか……。表向きには「自由参加」と言いつつ、参加しないと、「協調性がない」「組織としてチームプレ―がもっとも大切なのに……」など、文句を言われまくるのだとか。辛すぎます。
価値観がアップデートされない環境の恐ろしさ
「若い子たちは、イベントの場を仕切る司会や雑用、段取りやお酒や食事の手配、すべて上から丸投げされるんです。もちろんお給料は一切でません。一日中働きまくって、さらに上司からは、『若いときの苦労は買ってでもしろ』とか、『気が利かない奴は仕事もできない』とかダメ出しまでされる」
いわゆる、目下をこき使う人間の常套句(じょうとうく)ですね。

「こんなのいまどき珍しいですよね。でも、地方の田舎の中小企業には、まだまだうちみたいな社風とノリの会社って結構多いと思います。昭和のまま時が止まっているような、社員同士の交流もまったくアップデートされていないような。会社自体が閉鎖的すぎる空間なので、更新されるチャンスもほとんどないんです」
コロナ禍で交流が最低限だったときに入社した若手たちは、こうした悪習に相当とまどっているそうです。
「コロナは終わったんだよ、マスク外せよ!」
「そのくせ、参加費も当然のように取られるんですよ。信じられます? とくにBBQなんて最悪です。何日も前から準備して、丸一日つぶして食材を焼いたり運んだり片づけたりして、車も出すからお酒も飲めないし、ほとんどゆっくり食べられない。地獄です」
さらに、冒頭で述べたノーマスク強要が起こったのもBBQの場でした。

「マスクをしていると、『潔癖症か(笑)』『コロナは終わったんだよ、外せよ!』と文句を言われました。そして最後に『参加費は平等にひとり4000円ね』と奪い取られる……。お金を払ってこき使われて、もうすでに20代の社員数名から『会社の行事がしんどい』『もう会社自体辞めたい』と相談されています」
このままでは新入社員がみんな辞めてしまう
田代さんいわく、そんな若手社員たちの悩みを上司はまったく理解していないそうです。
「それどころか、『自分たちが楽しいことは、部下たちもきっとみんな楽しんでいるだろう』と本気で思っているのが最高に面倒くさい。今でさえ、『コロナはもう終わったから、行事企画しまくるからな!』『期待していいぞ』とかテンション高めに言い放っているので、今後はさらに増えるかもしれません。
今年中に若手社員が全員辞めて、いなくなるかもしれない。そしたら、一番大変な役目は繰り上げになって私たちにものしかかってくる。本気で上司の言動におびえています」
コロナ禍で慣れた人との距離感が、その反動でより密になるとは……。昭和世代の上司と、令和入社組の若手たち。心地よい距離感を共有することは、難しいのでしょうか。
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―シリーズ「新しい生活様式がしんどい」―
<取材・文&イラスト 赤山ひかる>
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赤山ひかる
奇想天外な体験談、業界の裏話や、社会問題などを取材する女性ライター。週刊誌やWebサイトに寄稿している。元芸能・張り込み班。これまでの累計取材人数は1万人を超える。無類の猫好き。
(エディタ(Editor):dutyadmin)