保護者と学校が協力しながら、子どもの健やかな成長のためにさまざまな活動をする団体「PTA」。PTAは、P=Parent(保護者)、T=Teacher(先生)、A=Association(団体)の略です。
各学校によってその活動は異なりますが、多様化する家庭環境下でのPTA活動について、疑問を抱いている保護者も多くいるようです。
そもそもPTAって?
そもそもPTAは、保護者が任意で加入する団体であり、強制で加入させる制度はなく、拒否することもできます。
PTAの組織は基本的に、会員(保護者や教員)から選出される「役員会」と「専門委員会」からなります。「役員会」は、会長や副会長・書記・会計といったPTA全体の運営にかかわる活動をする人たちです。
「専門委員会」は、例えば「文化委員会」(ベルマーク集めや花壇作り)、「校外委員会」(旗振り当番や行事の手伝い)、「広報委員会」(広報誌製作)など、各委員会ごとに分かれて活動する人たちです。さらに、「専門委員会」の代表者と「役員会」「校長・副校長」を含んだ「運営委員会」もあります。
PTAの膨大な活動量と保護者の負担を解消するべく、近年、PTAの解散や外注化が注目されています。しかし、PTAの活動は多くの小学校で残り続けているのが現実。筆者の子どもが通う小学校も例外ではありません。
各クラスから毎年数名のPTA役員の選出がある新学期は、保護者にとって気持ちがモヤっとする時期でもあります。
PTA役員は、年度始めの懇談会で選出されることが多いようですが、立候補者がいない場合は誰かの手が挙がるまでの嫌な沈黙や、保護者同士で役員の押し付け合いがおきることもあります。そんな空気感に耐えられないと感じる保護者の中には、懇談会をあえて欠席する人もいるほど。
そうは言っても、PTAの活動は経験してみないとわからないことも多いはず。そこで今回は、PTA活動の経験がある小学生の子をもつ2人の女性に話を聞きました。
毎朝、子どもより早く出発して「旗振り当番」

「私がPTA役員になったのは、クラスの保護者に立候補者がいなかったからです。誰もが逃げるように息をひそめる、あの沈黙の時間がものすごく苦手なので、沈黙が起きる前に手を挙げました」
そう話すのは小学5年生の子を持つ田中恵美さん(仮名・38歳・パート勤務)。子どもが小学4年生の時に1年間、PTA役員を務めた経験を語ってくれました。田中さんはPTAの仕事の中でも「校外委員会」に所属し “旗振り当番”のまとめ役を担当したそうです。
「旗振り当番って、子どもが通学する時間に旗を持って立つので時間的には結構厳しかったですね。子どもには鍵を持たせて、朝8時に家を出るように言い聞かせました。中には親と一緒に登校させる方もいましたが、私はまとめ役だったので朝7時半には待機や諸々の確認をしなければいけなくて……平日の朝は子どもより早く家を出ていました」
田中さんにとって、玄関先で自分の子を見送れない日々は体力的にも精神的にも負担だったようです。中でも真夏の炎天下での旗振り当番は、相当ぐったりしたそうで、家に帰ってもなかなか家事ができなかったと言います。
旗振りのお手伝いを募るのが地味にツラい…
「毎朝の事だったので、正直キツかったですね。でも、それよりキツかったのは、PTA役員や委員会以外の会員(保護者・教員)から旗振りのお手伝いを募らなくてはならないことでした。全校児童1000人超えの小学校で、かなり学区が広いんですよね。5つの通学路で区間ごとに分けて通学時に危険な場所に旗振りとして立ってもらうようにしたかったのですが……人手が全然、足りませんでした」
責任感の強い田中さんは、やむを得ず、人手が足りない学区に住んでいる家庭へ直接お願いに行くことになったそうです。
「直接PTAの活動をお願いしにいくのは、本当に気が進みませんでしたね。でも、旗振り当番のまとめ役として、登校の際に児童が車の死角になる場所や、横断歩道などの危険な場所に旗振りがいないのは不安でした。何かあった後では遅いので。
旗振り当番は、危険が伴うために下の子連れではできない決まりがあります。なので、事前に下の子がいないかを調べてからお願いに伺うことにしました」
「妊娠してて」「介護があって」と断られ続ける
しかし、田中さんが直接お願いに行った先は、下の子がいなくても家庭の事情で朝の旗振りはできない家庭がほとんどでした。
「妊娠中なんです」「親の介護があって」「出勤がちょうど8時で」など、予想はしていたものの、平日の朝に旗振りとして立てるのは限られた人だと実感した恵美さん。
「結局、皆さんに事情を説明して地域の方に力を借りる事にしたんです。子育てを卒業している地域の方は、朝8時の旗振りも笑顔で引き受けてくれました。『子どもが好きだし、頼ってくれたら嬉しい』『時間もあるし、地域の役に立てるなら』と言ってくださる年配の方は思ったより多かったですね。正直、旗振りは地域の有志の方々にすべてお願いしてもいいのではと考えてしまいました」
PTAの選出が「点数制」

次のケースもPTAの活動を始めた後の体験談です。
「うちには小学生の姉妹がいるのですが、周りにはもっと小さい子の育児をしていたり、フルタイムで働いていたりするママさんが多かったので、仕方ないのかなって。PTA役員を引き受けることにしました」
そう話すのは、小学4年生と小学5年生の姉妹のママで、フリーランスで働く三浦咲希さん(仮名・40歳・ヨガ講師)。
三浦さんの小学校では、会員がPTAの委員会活動に参加すると「点数」が付くシステム。PTA役員の立候補がない場合には、この点数が低い人からPTA役員に選出されるそうです。
保護者の点数計算が大変すぎる!
三浦さんの小学校でPTA役員が会員に参加を呼びかける活動は、旗振り・ベルマーク集め・花壇手入れの3つ。
「PTA役員もPTA委員会もこの点数があるのですが、役員以外の方も活動参加で点数を増やすことができます。でも、活動の拘束時間や難易度ごとに点数を変えているので、これが結構ややこしいんですよね。
私はこの点数管理をする『選考委員会』の代表者になってしまい、本当に大変な1年でした。小学校にいる兄弟関係の整理やら、これまでの点数の精算やらを表計算ソフトにまとめなくてはいけなくて」
点数管理が大変だった理由は他にもありました。上の子が同小学校への在籍履歴がある場合、児童が卒業して5年間は会員に「合計点数の半分」の点数が継続されるそう。この点数の計算に難航したと言います。
「点数管理だけでなくて、旗振りやベルマーク回収の仕事を手伝うこともありました。でも、今振り返るとPTAでの私の仕事の大半は “保護者の点数管理” でしたね」
PTAも新たな形が求められる?

「小学校のためになるならと立候補したのに、PTA役員を押し付けるような保護者の点数管理は、正直、自分がしたかった活動ではありませんでした。
活動していく中で、『この活動はポイントが高いですよ』『点数が低いと役員やってもらいますよ』など、PTAの活動に対してマイナスのイメージを植え付けるような発言もしてしまったし……もう二度とやりたくないです」
PTA役員を引き受けたものの、今回の2人のように活動に疑問を感じる人も多いようです。
昔と違い、近年は家族の形も多様化してきています。PTAを存続するなら活動の一部でも「外注化」するなど選択肢を増やしていきながら、保護者と小学校で組織のあり方や活動を再検討していく必要があるのかもしれません。
<取材・文/木村ひかる>
木村ひかる
湘南在住の編集者/ライター。4人の子どもを出産後、独学でライターに転身。多数のメディアにコラムを寄稿している。「自分が読みたい記事」を書くのがモットー。
Twitter:@hikaru___kimura、Instagram:@hikaru.writer
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(エディタ(Editor):dutyadmin)