日本人の生活とは切っても切れない存在の「お風呂」。海外生活の長い筆者は、もう20年くらい「日本のお風呂が恋しい……」と思っています。今回は、そんな筆者が2023年夏から生活している「ポルトガル」のお風呂事情についてご紹介します。
ポルトガルの家庭に浴槽はある?
早速ですが、ポルトガルの家庭にお風呂、つまり浴槽はあると思いますか?
正解は、意外と「ある」です。
というのもなんと2023年5月までは、建築業者が新たな建築許可を得る際には「最低1つのバスルームにビデと浴槽を設置(もしくはそのスペースを確保)しなければいけない」という義務があったからです。
そのためシャワーだけでなく浴槽がある家庭が多いようです。

とはいえ、日本のように洗い場はなく、自動給湯や追い焚きができるものではありません。ビジネスホテルなどでおなじみのトイレ、洗面台、浴槽が1室に集まったユニットバス形式が一般的です。
浴槽に蛇口とシャワーが取り付けられているので、浴槽を使いたい場合は、都度、お湯を張って入浴することになります。

シャワーは固定のシャワーヘッドだけではなく、手持ちのタイプも多いようです。筆者はこれまで複数の民泊のシャワーを使用しましたが、水圧に問題を感じたことはありません。
なお、豪華なホテルなどには、バスルームとは別に、寝室やベランダに入浴専用の独立した浴槽やジャクジーを備えた部屋もあります。
ポルトガル人は自宅の浴槽に“入らない”?

さて、浴槽自体は比較的多くの家庭にあるのですが、実際にポルトガルの人たちが使っているかというと、それはまた別の話。
浴槽は場所を取るから邪魔、水がもったいない、掃除が面倒、お年寄りにとって出入りが危険、という意見も多く、リフォームして浴槽を取り外し、シャワーブースに作り替える人も少なくありません。

ただ、小さな子どもの入浴には楽しく入れる浴槽にしたい、という考えは根強いよう。また、スペースと経済的な余裕がある人たちは、見た目を重視してデザイン性の高い独立した浴槽を設置することもあるようです。
インテリアデザインのWebサイトでは、リラックス空間としてお風呂の「スパ」化を提案する記事も比較的よく見かけますが、なかなかそれほど余裕のある人は多くなく、自宅でのお風呂離れは進んでいると言えそうです。
ローマ帝国の時代から、温泉が人気!
一方でポルトガルには天然温泉場があり、ローマ帝国の時代から温泉が親しまれてきました。かつては湯治客が主だったようですが、現在はモダンな設備やサービスを備えた温泉も増え、リラックスしたい人々でにぎわっています。基本は男女混浴で水着を着て入浴する「温水プール」スタイルのようです。

温泉が豊富なのはポルトガル北部から中部。ですが筆者が最も気になっているのは、ポルトガル本土から約1500km離れた火山島、アゾレス諸島(アソーレス諸島)の1つ、サンミゲル島の天然温泉です。「地球最後の楽園」や「伝説のアトランティス大陸の名残」とも呼ばれるこの島には、黄金色の温泉があるのだとか。早く出かけてみたいです!
7年間ブラジルに在住し、広告代理店に勤務する一方、ブラジル文化の取材、執筆を行う。その後ポートランドを経て、2023年にはポルトガルに移住。フリーランスライターとして活動、ブラジル&米国ノースウェスト、ポルトガルの情報を発信中。著書に『好きなことして、いい顔で生きていく 風変わりな街ポートランドで、自分らしさを貫く15の物語』(イカロス出版)がある。All About ブラジル・アメリカ・ポルトガルガイド。
執筆者:東 リカ(ライター)